私の所属する部署の業務は大きく二つに分けられます。一つは、新規製品の妥当性の確認です。例えば、エンジン始動部のキーシリンダーを規定回数作動させ、故障が発生しないことを確かめる作動耐久試験などです。もう一つが、市場で発生した不具合の解析で、私は自動車のステアリングロックと呼ばれる部品を担当しています。
不具合解析では、同様の不具合を「再現する」ことが重要になります。何が影響して不具合が発生したのかを特定できなければ、根本的な解決策を講じられないからです。不具合の発生原因には、気温や湿度、あるいは使い方などさまざまな条件が関係しています。さらに、いくつもの条件が重なり合ったときだけ発生する場合もあります。そのため、不具合が発生したときの情報を可能な限り集め、再現検証を行います。解析手法も、光学顕微鏡でクラックの有無を見たり、X線で内部損傷状態を非分解で確認したり、金属分析に適したSEM(走査電子顕微鏡)を活用したりとさまざまです。原因が究明できたら再発防止の対策を講じていきます。
不具合の原因究明は、完成車メーカーでも行われます。しかし、それでも分からないときに当社へ解析依頼がくるため、私の所属部署は「最後の砦」ともいわれています。