東京研究開発センター(TRDC)で、照明製品「SALIOT(サリオ)」に搭載されるLED照明の研究開発に携わっています。LEDから発せられる光は、レンズやリフレクター(反射板)によって光量や配光が制御され、初めて照明器具として機能します。レンズの形状や大きさ、光源との位置関係、リフレクターの配置など、照明を構成する要素はさまざま。それらの条件を光学シミュレーションソフトに反映させ、最適な設計を探ります。
シミュレーションによってレンズの設計を固めた後は、実際に試作品を製作します。浜松工場に金型の製造を依頼し、完成した金型を用いて自分でレンズを成型するのです。レンズの材料はポリカーボネートというプラスチック材。光を拡散させるための細かな凹凸も表面に再現します。検証を経た結果をもとに改良を行い、また試作品を作ります。これを繰り返し、最終的に目的にかなったレンズを製品化へと進めていくことになります。
しかし、いくらシミュレーションや試作によって目指すべき品質に到達したとしても、それが「正しいか否か」についてはまた別の話です。部品には仕様設計という明確な基準がある一方で、照明器具が生み出す光には「これを満たせばよい」という絶対的な指標はありません。照明の色、明るさ、範囲、作り出す空気感……、それらは人によって判断が異なるので、答えは一つではないのです。製品を使う人々の感性をいかに捉え、市場やお客様のニーズを満たした製品を生み出すか。それが仕事の難しさでもあり、醍醐味でもあり、とても奥の深い世界ですね。