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社外取締役×サステナビリティ推進部門長 座談会
ミネベアミツミのマテリアリティ(重要課題)への取り組みについて

今回、当社のマテリアリティの見直しを機に、社外取締役の松村氏、芳賀氏、新たに就任された片瀬氏に社外取締役としてのお考えを伺うとともに、当社の取り組みについてサステナビリティ推進部門長吉田取締役との意見交換が実施されました。

マテリアリティ(重要課題)
重要テーマ1
地球環境課題解決への貢献
重要テーマ2
社会を支える高品質な精密部品の創出
重要テーマ3
従業員の力を最大化
画像:社外取締役 片瀬 裕文

社外取締役 片瀬 裕文

画像:社外取締役 松村 敦子

社外取締役 松村 敦子

画像:社外取締役 芳賀 裕子

社外取締役 芳賀 裕子

画像:取締役 専務執行役員 吉田 勝彦

取締役 専務執行役員 吉田 勝彦

初めに新任の片瀬取締役から、ご経歴とミネベアミツミ社外取締役就任の抱負についてお伺いします。

片瀬:私は通商産業省・経済産業省を中心に政府に35年間おりました。その時に感じていたことは、日本経済が停滞するなかで、多くの日本企業が成長に向けた十分な活力がなくなったということです。その様ななかで、新しい付加価値を積極的に生み出し成長しようとする姿勢を非常に明確に打ち出していたのがミネベアミツミでした。オーガニック(自律的成長)とM&Aの両方でシナジーを創出しようとする、活力に溢れた会社であると認識していました。
私自身はこれまでエネルギー、環境、技術、通商、航空宇宙などさまざまな政策に関わりました。これらの経験もいかしながら、当社が成長していくなかでの重要課題を見出してそれを経営方針にいかしていけるよう助言するとともに、世界の方向性にマッチしないのではないかと考える場合には意見を申し上げるつもりです。積極的に後押しするとともに必要があればブレーキを踏むという両面から、当社が今後の日本企業の一つのモデルとして、大きく成長していくように貢献したいと思っています。

今回、マテリアリティ(重要課題)の見直しでは 「地球環境課題解決への貢献」と環境課題が大きく掲げられました。具体的な取り組みついてお聞かせください。

吉田:今期から当社はQCDESS™という新しいスローガンを掲げ、その中核にEco(環境)やEfficiency(効率)を据えた経営を実践してまいります。当社の強みである超精密加工技術と、その他のコア技術を相い合わせていくことで、「地球環境課題解決への貢献」に向けて取り組みを進めます。

片瀬取締役、今回見直された環境課題について、当社に期待される役割をどのようにお考えでしょうか。

片瀬:地球環境問題対応への世界的な流れは一時期停滞したかに見えましたが、もう流れは変わらないと考えています。そのなかで、当社の技術と製品は、カーボンニュートラルの大きな流れに乗っていると考えられます。例えば、カーボンニュートラルに向けた重要な要素に社会経済の電化が挙げられます。電化を進めようと思えば、電気で物を動かすためのベアリングとモーター、それらを制御するためのセンサー、アナログ半導体がキーとなります。当社はこれらのそれぞれに強みがあり、さらにそれらを組み合わせることで、環境性能面を含めて非常に高い競争優位性を発揮しています。地球環境問題解決のためにはイノベーションが鍵であることは世界の共通認識ですが、まさに、これからも当社が次々とイノベーションを起こし新しい技術を素早く世の中に投入していくことが、地球環境問題解決に貢献することになると思います。
一方、企業である以上は、世界が国レベルで「グリーン成長戦略」を進めようとしているのと同様に、このような製品・技術の環境への貢献を製品価値に結びつけ、成長していくビジョンを具体化していくことが不可欠です。このためには、例えば新しいビジネスモデルを創り出し、あるいは標準化などの制度も活用しながら製品の優れた環境性能や効果を分かり易く示すことのできる環境を創り、製品価値に結びつけるなど、事業分野や製品の特性に応じた取り組みが重要と考えています。

松村取締役、「地球環境課題解決への貢献」を進めるうえで課題等はありますでしょうか。

松村:パリ協定が掲げる気温上昇抑制目標の達成に向けたカーボンニュートラル実現を目指す世界的流れのなかで、日本を含む多数の国が2050年までの脱炭素実現を表明しており、また日本政府として2030年度での意欲的な中間目標を示しています。こうした状況下で企業活動における脱炭素の取り組みが加速しております。当社の地球環境保護への持続的な貢献に向けた活動内容を明確化し、その情報をきちんと開示する「取り組みの見える化」が非常に重要になってくると思います。
当社の取り組みに関しては大きく2点あります。1点目は当社の環境貢献型製品、いわゆるグリーンプロダクツの生産比率を高めることです。そのためにはCO2排出削減効果に関して分かり易い形で示すことにより、そのCO2排出削減効果の有用性をこれまで以上にアピールし、グリーンプロダクツがお客様に採用されることが重要と考えます。2点目は当社の事業活動に伴って排出されるCO2の削減です。当社はCO2排出総量を2031年3月期までに、2021年3月期比で30%削減する目標を掲げました。今後はこの目標達成に向けた道筋をより明確化する必要があります。目標達成のためのさまざまな手段について、実行可能性と費用対効果をスピーディに詳細に検討していくことが重要であると思います。すでに当社ではタイの主要2工場で大規模な太陽光発電システムが導入され、年間約4,000トンのCO2排出量の削減が見込まれており、今後他の拠点でも再生可能エネルギーの利用が進むことを期待しています。
企業の経営目標において、温暖化ガス排出抑制を明確に取り込んでいくことの重要性が高まっています。当社は昨年8月にTCFD 提言への賛同を表明し、温暖化対策への取り組みを着実に前進させていることを対外的にアピールしています。今後もSBT(科学と整合的な脱炭素目標設定)、RE100(使用するエネルギーを100% 再生エネルギーとする活動)など、社会的な要請が更に高まっていくと考えられます。この点について、引き続き社外取締役として注視していきたいと思っています。

吉田:当社製品は顧客先における完成品のCO2排出量の削減に大きく貢献しております。また当社自身の事業活動に伴い排出されるCO2の削減に取り組むことで、カーボンニュートラルの実現へ向けてさらなる貢献に努めてまいります。

「社会を支える高品質な精密部品の創出」について事業ポートフォリオ戦略という観点から、お考えをお聞かせください。

吉田:これまで社会の変化に対応するため事業ポートフォリオを充実させてきました。製品の高性能化そして強靭な供給体制によって、社会に貢献することが当社の使命であると考えます。不測の事態が起きた時でも供給責任を果たせるよう、経済的合理性を加味しつつ分散した生産拠点網の維持・構築が大切であると考えています。

芳賀:当社の事業ポートフォリオは、持続的成長の源泉です。「8本槍」と呼んでいるコア事業は、超精密・超高品質であることによって長期にわたり競争優位性を維持できると思っています。
さらなる持続的成長に向けたシナリオの1つ目は、その8つをそれぞれ強化することです。もちろんそれは片瀬さんがおっしゃったようにオーガニックとM&Aの両方を使うことになりますが、8つについてどういう優先順位をつけていくかということがポートフォリオ戦略の鍵になってくると思います。例えば当社は昨年アナログ半導体事業が今後さらに市場拡大するという経営判断のもと、自社の競争優位性を高める目的で投資の優先順位を引き上げ、昨年そして今年と投資を実行してきました。
持続的成長のシナリオの2つ目は、8事業の組み合わせにより新しい顧客価値を創造することで、これを当社は「相合(そうごう)活動」と呼んでいます。8つの事業はそれぞれの基盤技術が比較的近く関連性のある多角化になっているため、事業シナジーを発揮し易いと考えられます。また、顧客の業種が多岐にわたることも、当社の安定した持続的成長を実現させていると考えられます。この事業シナジーにより新たな顧客ニーズを取り込むことが可能となり、片瀬さんがおっしゃった環境貢献と製品価値最大化にもつながっていくものだと考えます。

投資案件において、社外取締役として判断されるポイントは何でしょうか。

芳賀:取締役会にて審議される投資案件は、事業と顧客のポートフォリオ戦略を前提に優先順位が明確であり、執行側で十分に検討されている印象を持っています。大きな投資案件の際は事前に説明を受け十分に判断できるような情報を得ています。疑問点があれば、私だけでなく他の社外取締役もその都度確認できるような機会が設けられています。
社外取締役として投資判断にあたり、中長期戦略との適合性、持続的成長や企業価値向上への貢献とそのプロセス、投資後のシナジーを見込んだ事業計画ができているか等について確認しています。すべての投資は必ずリスクを伴うため、単にリスクがあるのでブレーキを踏む、リスクが無いのでアクセルを踏むということでは、せっかくの投資機会を見逃す可能性があります。リスクを把握しそのリスク低減策が合理的であれば賛同できますが、逆にリスクの検証が不十分と思われる案件であれば意見を申し上げるつもりです。それは私だけでなく他の社外取締役も同様の観点から発言されていると思います。

持続的な成長に向けた、事業ポートフォリオの見直しについてはいかがでしょうか。

芳賀:事業ポートフォリオの組み替えのタイミングですが、外部環境に大きな変化があれば組み替える必要性が高まります。
現在のところ当社は8本槍のコア事業中心で特に問題無いと思います。ただこの8本槍が永続すると決めつけてしまうのはリスクです。当分は置き換わらないだろうという想定があっても、常に外部環境の変化の兆しを察知するような継続的な取り組みをおこなっていく必要があると思います。

片瀬取締役、事業の優先順位についてどのようにお考えでしょうか。

片瀬:芳賀さんの話にもあったように、8本槍のそれぞれを強化することが基本だと思います。8本槍がそれぞれオーガニックとM&Aを組み合わせながら持続的に成長しようとしています。当社の強みとして、M&Aにより外部の新しいアイディア・技術や優れた人材をうまく会社全体の中に統合し、1+1を2より大きくするノウハウがあるように私は感じています。社長のリーダーシップの下、明確な目標を共有して一致して取り組んでいくコーポレートカルチャーがその基盤にあり、それをきちんと継続していけば、当社は今後も非常にユニークな会社として成長し続けることができると思います。日本企業はこれからも再編や統合が不可避と思いますが、M&Aで得た経営資源をうまく統合しながら事業ポートフォリオを強化できることは当社の大きな強みではないでしょうか。

「社会を支える高品質な精密部品の創出」について対応すべき点はありますでしょうか。

片瀬:目下、半導体の不足によって自動車産業をはじめ半導体ユーザーである産業が大きな影響を受けています。また、国際的に「サプライチェーン・レジリエンシー」*というコンセプトにより、サプライチェーンも含めたリスクマネジメントの重要性が世界共通認識になっており、政府・民間共に取り組みが始まっています。お客様からの安定供給要請が益々厳しくなる中、当社は十分な対応をしているか、また十分納得していただける体制構築ができているか不断に見直し、取り組んでいくことは経営にとって非常に重要な課題だと思います。

* サプライチェーン・レジリエンシー:サプライチェーンのリスクへの対応(有事の際の影響を最小限にとどめ、ビジネスの継続性を高めるための強靭性の確保)

吉田:執行側が戦略や方向性を正しく認識し具体的に取り組みを進めることが重要と考えています。例えば事業領域の拡大は隣接領域で当社の強みがいかせる、あるいはシナジーが見込める領域での展開を進めます。また、「相合」を進めるためには、事業部という単位を超えた取り組みが重要で、それを可能とする上位のマネジメント力向上や組織間交流を進める仕組みの構築などが重要です。
社長の強いリーダーシップの下、縦と横を組み合わせた、マトリックス組織による効率的な運営により、ご指摘いただいた戦略や製品価値最大化につなげてまいります。

マテリアリティ「従業員の力を最大化」について、お考えをお聞かせください。

吉田:これまでの2つのマテリアリティを実現するには人的資本の充実が不可欠です。例えばAI、DXといった広範囲で高い専門性が求められるポジションでは、社内登用に留まらず、広く外部人材を募り集まっていただいています。当社は1972年からアメリカ、シンガポールに進出し、その後東南アジア各国に展開し、海外従業員比率が高くなっています。グローバルオペレーションになるということで、ダイバーシティ等については経営課題として取り組んできました。
今後、当社の経営方針や顧客ニーズを加味し、人的リソースの強化の重要性の高まりを受けて、これらの取り組みをさらに充実させてまいります。

松村取締役、グローバルに事業を展開していく上での一体感について、どのようにお感じでしょうか。

松村:グローバルな事業展開において全従業員が一体感をもって企業価値を高めていくためには、企業理念に基づく意識の共有が重要であると考えます。私が視察をおこなった東南アジアの各拠点においては、ローカルスタッフの一人一人に当社の経営理念や社是などが浸透していて、そのことが海外従業員の意欲向上につながっていると実感しました。また、全従業員が会社への誇りを共有していることが当社グループでの一体感の醸成を可能にしていると感じます。
一方、グローバル人材として育成された日本人従業員が、世界各拠点で活躍していることも当社の強みだと感じています。当社でのグローバル人材は、情熱・好奇心と自ら考える主体性を持ち、モノづくりの基本を身につけ、グローバル的視野で考え、チャレンジ精神で行動する人材と位置付けられています。従業員に対して研修をしっかりとおこなった上でグローバルに働く機会を提供することで、高い能力を身につけたグローバル人材が徐々に育ってきていると実感しています。また、海外拠点で活躍する女性が増えていることもとても喜ばしいことです。
私はこれまで国際経済学の研究に携わってまいりましたので、グローバルな視点から当社グループの運営を注視しております。東南アジアの拠点視察では、日本人駐在員とローカルスタッフの人材面での相合が非常にうまく進んでいると感じました。今後も、グローバル人材の育成等で助言していきたいと思います。

ダイバーシティ&インクルージョンについての手応えはいかがでしょうか。

松村:昨年9月に女性活躍推進プロジェクトが発足し、12月にはダイバーシティセミナーがオンラインで開催されました。セミナーの目的は、女性活躍を推進する意識、風土を醸成していくことにあり、私の講演では多様性がもたらす効果、言い換えれば人材面での相合力活性化によるプラスの効果と相合力活性化実現への方策を中心にお話しし、男女を問わず社員からさまざまな反響をいただき手応えを感じました。プロジェクトの活動は順調に進んでおり、その成果の一つとして「えるぼし」の最高位認定に至ったと思っています。認定取得は当社の社会的な評価を上げるだけでなく、ステークホルダーへのアピールにつながることが期待されます。また採用活動にも少なからず良い影響が出ると思っています。
しかし「えるぼし」最高位認定は通過点であり、さらなる充実が必要です。例えば、当社の日本国内の女性管理職比率が業界平均を下回っていることが挙げられます。まずは女性採用比率を高める努力をおこない、女性向けの研修体制を充実させるなど、女性の活躍機会を広げる取り組みが重要であると思います。またこれまでの活動を通じて、当社の女性社員には会社の成長に貢献したいと強く望んでいる人が多いと感じています。一方で仕事と育児の両立に悩んでいる女性社員も一定数存在しております。このような同じ悩みに直面する社員同士で意見交換をおこなうネットワークが立ち上がり有効に機能しています。こうしたネットワークが継続して活用されるよう効率的な仕組みづくりも重要だと思います。
女性活躍推進とともに、性別や国籍などを問わずさまざまな従業員が能力を最大限に発揮できるよう、全社員にとって働きやすい職場を実現することを目指していかなければならないと思います。ダイバーシティが向上することによってビジネスのアイディアや会社の戦略策定にも良い効果が生じると考えます。そのために、それぞれの立場の社員が直面する諸問題の解決に取り組むことが必要で、よりよい職場環境作りに向けたきめ細かな対応が課題となります。

芳賀取締役、「従業員の力を最大化」するため、対応すべき点はありますでしょうか。

芳賀:当社の特徴として、海外従業員比率9割、従業員数約10万人といったことが挙げられます。この事業規模は強みである一方で、これだけ規模が大きくなると本社から目の届きにくい部分が発生し、コンプライアンスリスクも懸念されます。本社が現場で何が起きているかということを適宜把握する目的で、事業所別にモチベーションサーベイ実施の必要性を感じております。モチベーション低下時にリスクが顕在化するケースがあるため、事業所別のモチベーションの変化を定期的に確認することで、コンプライアンス上のリスクを事前に回避することが可能になります。また事業所別に従業員の力を最大限に発揮してもらえているかの確認にもなります。
それと若い世代が力を発揮しやすい環境を用意し、事業に反映させる工夫を検討していかなければいけないのではないかと考えます。片瀬さんがおっしゃったイノベーションには、こうした若い世代のアイディアの活用も重要になると思います。

吉田:社長にも参画いただき人事制度を包括的に見直すプロジェクトに着手しております。年齢、性別、国籍を問わず活躍できる機会を設け、中長期的な育成や選抜等を見直すことにより、従業員の力を最大限に発揮できる環境を整えることで持続的な成長へつなげてまいります。

ミネベアミツミの社外取締役は専門性のある知見や高度な経験をいかし、さらに社外の価値観、グローバルな潮流に照らしマテリアリティへの取り組み状況を注視しています。
また、経営に関する積極的な助言や執行の監督を通じて、当社のマテリアリティの解決を後押しし、持続的成長と中長期的な企業価値向上に取り組んでおります。

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