ミネベアミツミのグローバル生産で実現
燃費向上とエンジンの小型化への切り札

ベアリング

自動車用ターボチャージャー向け高耐熱性ボールベアリングユニット

エコへの意識は高まり続け、環境規制は世界レベルでの強化が進んでいます。各自動車メーカーも環境に配慮した新型車の実現のため、日夜燃費の向上に向けた研究開発を続けています。その結果として導き出された一つの答え、それがエンジンのダウンサイジングでした。そこで注目を浴びているのが、従来のエンジンと同等の動力性能を維持するための出力補助装置であるターボチャージャー。ミネベアミツミはそのターボチャージャーの性能に直結する新世代の高耐熱性ボールベアリングユニットの開発に成功しました。

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自動車用ターボチャージャー向け高耐熱性ボールベアリングユニット

急速な需要の拡大が見込まれる
ターボチャージャー

旧来、ターボチャージャー(過給機)は自動車の速度・最高出力を高めるため、 1980年代を全盛に多くのレーシングカーやスポーツカーに搭載されていました。当時は燃費とのトレードオフの関係にあったターボチャージャーですが、近年では環境規制対応で小型化するエンジンの出力不足を補うための出力補助装置として最注目され、その活躍の場を一般自動車やエコカーへと広げています。


ターボチャージャーの性能を左右するベアリング

本来であればそのまま廃棄される排気ガスを再利用することで、エンジンの燃焼効率を向上させ、少ないエンジン容量でも大きなエンジン出力を得ることができるのがターボチャージャーです。

ターボチャージャーの仕組み

エンジンのシリンダーから放出された排ガスの圧力を利用してタービンと同軸上のコンプレッサーを回転させます。自動車が吸入した空気はコンプレッサーで圧縮されてシリンダーに送り込まれ、空気の吸気量が増加、燃焼効率が向上する仕組みです。効率良く圧縮空気をエンジンに送りこむために重要な役割を担うタービンとコンプレッサー。2008年、ミネベアミツミではその回転効率に直結するタービン主軸用の新型ベアリングの開発に着手しました。

タービン主軸用のベアリングは、800℃を超す超高温の排気ガスを動力源とするタービンに使用され、常にオイルに浸され続けながら、20万回転を超える超高速回転に耐えなければなりません。そのため、これまで一般自動車に搭載されるターボチャージャーの多くは過酷な環境に強いオイル潤滑ベアリングが採用されてきました。ただし、オイル潤滑ベアリングはその構造上、加減速時の摩擦抵抗が大きく、速度追従性がボールベアリングに比して劣る(特に低温でのエンジン始動時)ため、アクセルを踏み込んでからターボチャージャーによる吸気圧の上昇までにタイムラグが生じ、加速の鈍さを感じたドライバーは必要以上にアクセルを踏み込んでしまい、燃費効率の低下を招いていました。実際の市街地走行では、頻繁に加減速が繰り返されるため実用上の燃費に影響を与えています。

従来のオイル潤滑ベアリング(別名:スリーブベアリング/メタルベアリング)

小型・低トルク性・耐久性・耐熱性

新しいベアリングに求められた要件

これらの問題を解決するため、新型ボールベアリングには、エンジンユニットのダウンサイジングに伴う小型化や、高い耐久性・耐熱性、そして低トルク性といった、主に4つの改善が求められていました。さらに、一般自動車やエコカーに幅広く採用されるためには、量産性の実現は必須。創業以来、ベアリング生産技術を磨き続けてきたミネベアミツミの挑戦が始まりました。


さまざまな要件に応えた高耐熱性ボールベアリングユニットの開発

効率の向上と自動車の加速までのタイムラグの軽減を実現しました。

6mm、10mm、12mmの3種類の軸径を揃え、1.4L~10Lの排気量まで対応

オイル潤滑ベアリングよりも複雑な構造のボールベアリングですが、耐久・耐熱性の課題は複数の素材のパーツを組み合わせることで解決しました。内輪と外輪の材質に航空機用ジェットエンジンの主軸受にも用いられるM50を、ボールの材質には重量が軽いため発熱量が少なく高速回転に向くセラミックス製素材を採用しています。また、リテイナーに特殊表面処理を施すことでボールの回転効率を向上させています。さらにユニット化による小型化に加え、ターボチャージャーメーカーの組み込み負担の軽減や、パーツ全体としての安定感やバランスの向上も実現しました。

ボールベアリングユニットの断面図

ボールベアリングとオイル潤滑ベアリングの機械損失比較

実際の流体解析の画面

ミネベアミツミのグローバル連携によって高度な製品開発を実現

新型ボールベアリングユニットの開発と量産までの道のりには、ミネベアミツミのグローバル技術開発力と生産体制が不可欠でした。ドイツ子会社のmyonicが基本設計と開発を担い、同じくドイツ子会社のPMDMが流体や熱解析などの分析業務を担当。その上で、日本の軽井沢工場が試作・量産設計し、タイのバンパイン工場が量産を行うというように、グローバルに事業を展開しているミネベアミツミグループの強みが最大限に活かされているといえます。

2008年にミネベアミツミグループに加わったmyonicは、航空・医療向け特殊ボールベアリングの製造で70年以上の歴史を持つ老舗メーカー。一方、PMDMは、ハードディスクドライブの開発で培った流体・熱解析などに高い技術を有しています。両社が耐久・耐熱性のための熱解析や、ボールベアリングの潤滑材として用いられるオイルの流体解析を実施し、試作とテストを繰り返す中で数々の要件に応える製品の開発を推進しました。また、ミネベアミツミグローバル生産のマザー工場である軽井沢工場では、myonicやPMDMでの開発と併行して試作を繰り返すことで、新型ボールベアリングユニットを量産に耐え得る設計に落とし込みました。主力生産拠点であるタイのバンパイン工場では、妥協を許さない厳しい品質管理のもと、世界の一般自動車とエコカーの心臓部を支える高耐熱ベアリングユニットを生産し続けています。

インタビュー:絶対的な技術力と強固なグローバル連携 - ボールベアリング事業部 軽井沢工場

ミネベアミツミは日本初のミニチュアボールベアリング専業メーカーとして1951年に創業を開始して以来、世界のミニチュアボールベアリングの開発・生産を牽引し、時代のニーズに合わせた研究開発を繰り返してきました。今回の高耐熱性ボールベアリングユニットも、これまで培ってきたミネベアミツミの技術を応用することで、高性能製品の量産化を実現しています。この一つの製品の開発と生産を通じて、ドイツ、日本、タイの技術者たちが同じ目標に向かって協力しあい、ミネベアミツミグループに有機的な連携がうまれる結果にもつながりました。どれだけ複雑であろうと、ミネベアミツミには設計図さえあればどんなボールベアリングをも作り上げる技術力があります。ミニチュアボールベアリング製造のリーディングカンパニーとして、我々に作れないミニチュアボールベアリングはないと自負しています。


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