コーポレートガバナンス
更新日:2024年9月27日
社外取締役座談会
ミネベアミツミのサスティナブル経営これまでとこれから
当社社外取締役の村上氏、松村氏と、新たに社外取締役に就任された芳賀氏に、当社のサスティナブル経営、コーポレート・ガバナンスについてお伺いしました。
独立の立場で |
社外取締役 松村 敦子 |
長期的な目線での |
社外取締役 村上 光鵄 |
指名委員会は、 |
社外取締役 芳賀 裕子 |
ここまでの会社の成長、社長のリーダーシップについて、社外取締役としてどのように見られていますか。
村上:この10年間で売上高が約3倍・営業利益が約5倍と成長してこれた原動力は、社長の卓越した経営手腕、強力なリーダーシップ、そして、「『より良き品を、より早く、より多く、より安く、より賢く』つくることで社会に貢献する」という経営理念が全従業員に徹底的に浸透されていることに因ると思います。短期志向の経営だと、利益の出る事業だけ重視して、そうでないところは絞るとなりがちですが、当社はそうではなくて長期的な目線で事業ポートフォリオを構築してきたことが、今回のコロナ危機でも業績を維持しているということにつながると思います。
松村:社長は、さまざまな難局において強い信念のもとに素早く対応なさることで当社の持続的成長を支えていると感じています。社長のビジョンは定期的に発信される「ナビゲーション」と名付けられた全従業員へのメッセージで伝えられ、それによって当社の置かれている状況も伝わり、従業員に安心感とやる気を与えています。また、年に二度、一週間近くにわたって開催される会議(事業部門会議と事業計画検討会)において、社長の考え方が各部署に伝わり、この大きなグループ組織が一体化されているのだと考えます。
さらに社長は独自の発想によるさまざまな取り組みを提案され、一例として、人材活用の観点から「チームビルディング」構想を進めていらっしゃいます。社長の熱意に対して従業員から有効なアイデアが出されるなど、社長と従業員との連携が当社の強みの一つであると思います。
芳賀:私の研究テーマはM&Aと経営戦略で、これまでさまざまなケースを見てきました。これだけの件数のM&Aを実施しながら実際に成長を続けている企業はほとんどないと理解しています。初めて参加した6月の取締役会の議論で社長の質問に対する回答が印象的でした。単に案件に対する質問に回答されるだけではなく、将来を見据えた視点での見解をしっかり説明されています。長年にわたりM&Aをしながら成長を続ける手腕とそれを裏付けるリーダーシップの強さを感じ取ることができました。
M&A巧者として成功体験を積み重ねている中、現場力、目利き力という言葉が社長の口からも出てきますが、どのようにお感じでしょうか。
松村:当社のM&Aによる成長については、2つの要因を指摘したいと思います。一つは、統合に向けた周到な準備と十分なシナジーの検討が行われていることです。2点目は、統合直後の社長から統合相手企業の全従業員に向けた情報発信です。当社の組織の中での統合後の新事業の位置付けなどとともに、対等の精神による統合後の人材活用戦略が含まれており、こうした発信力は統合相手企業の従業員の心を動かし、シナジー効果を高める要因にもなると考えます。
芳賀:これだけM&Aで結果を出されてきたのは、買収前に何が目的で買収するかが明らかで、買収後のイメージを事前に明確に持たれていたからだと思います。また交渉・デューデリジェンスでもその目的が達成できるかどうかしっかり見極めておられるのかと想像します。M&Aによる企業成長で重要なことは、契約として買収できたかではなく、取得できた経営資源を自社の資源とどれだけ組み合わせて想定した相乗効果を出せるか、また、ポートフォリオマネジメントの観点から、利益が出ていても本当に自社で保有し続ける必要がない事業について適切な意思決定ができるかにあります。PMIにおいて、当初想定していたシナジー効果などが、実際にどの程度達成されているのかを定期的にKPIを設定して検証されることを期待しています。
村上:お二人が仰るとおり、統合後のPMIも重要です。加えて、社長は買収される側との人間関係、信頼関係も大事にされています。「買われるのならミネベアさんに買ってほしい」ということが多いのです。買収した後も相手を大事にするとか、そういう信頼関係が醸成できることも成功の一つの要因ではないでしょうか。また、社長は弁護士・法律家としての相対的な考え方がバックグラウンドにあり、一方の意見だけでなく、社外役員の意見にも「それもそうかな」と考えてくれます。これまでに我々社外取締役から見て、問題があると考える案件も中にはあり、議論の果てに中止したことや、取締役会の質問で「そこについては次回までに検討しようか」というようなことも何件かありました。
ですが、こうした議論の末に、社外取締役としてはある程度リスクを取りながらも進めるべきという案件に巡り合えば、ボードメンバーとしては背中を押してあげるということでやってきました。それに社長がしっかり応えられて、ここまでの会社に成長してきたということだと思います。
次のテーマですが、取締役会として、より充実させるべきテーマや、サスティナビリティの面も含めて望ましい姿があればお聞かせください。
松村:高い目標設定のもとでの企業価値のさらなる向上のために、取締役会でのサスティナビリティ推進の議論も重要と考えます。当社では、サスティナビリティ推進のためのマテリアリティを特定し、従業員の能力最大化のための職場づくり、各種の社会貢献、社会を支える精密部品の安定供給といったカテゴリーで重要テーマを設定しています。時間的制約により取締役会で十分議論できていないこうしたテーマに関し、具体的な取り組みと展開方法の議論の場が必要だと思います。一例として、女性活用も含めた当社ならではのグローバル規模での効率的な人材育成システムづくりなどが挙げられます。女性活用に関しては、私自身、年初に軽井沢・浜松・藤沢工場を視察し女性従業員との交流の場を持ち、キャリアアップを目指す女性従業員にさまざまな機会が提供され管理職への道が開かれていることを確認しましたので、ロールモデルの存在が今後の当社の女性活躍の広がりにつながると期待しています。一方で、仕事と育児・介護等との両立に向けた当社としての支援体制についての議論も重要であると思います。
芳賀:取締役会では議案の数と議論の時間がトレードオフになるので、そのバランスが重要と考えています。案件に対し「賛成」「反対」だけではなく、そこに至るロジックや考え方を議論するのも取締役会の重要な役割と思います。松村取締役が仰るマテリアリティを例に取れば、社外取締役にどういう観点を入れるべきかヒアリングするなど検討段階から情報共有し、それをベースに取締役会で議論を深めていくこともできると思います。また議案をどうスリム化しながら議論の時間を作っていくか検討いただきたいと思います。
社内取締役との意思疎通や、社外取締役への情報提供についてはいかがですか。
松村:取締役会の議論を深める目的もあり、社長と社外取締役との定期的な面談の場が新たに設定されました。社長から直接情報をいただく場を有効活用したいと思います。一方で、監査役と社外取締役との連絡会も活発化し、その場で提供される情報量も増加しました。取締役会の議論の中でフォローすべき点は、その直後の連絡会でより深く議論するなど、監査役と社外取締役との連携が強化されていると感じます。
芳賀:今後への期待も込めてですが、社外取締役としては事前に取締役会の議案をしっかり把握したいので、最低限その時間を確保していただければと思っています。事前説明については事務局と連携して上程部署から直接説明を聞くこともあり得ると思います。今年度から独立社外取締役が1名増員・取締役会の三分の一を占めガバナンス体制が強化されていますし、それを支える取締役会事務局の人員や構成も検討しなくてはならないでしょう。
村上:従来のやり方にとらわれず、取締役会での議論充実のために何が必要か会社とも意見交換し、社外取締役相互の連携も進めていきましょう。
最後に、取締役会の諮問機関として指名·報酬委員会ができて2年目になりますが、今後の展望などお聞かせください。
村上:当社の任意的指名・報酬委員会はその設計の自由度を活かし、先程芳賀取締役が触れられた独立社外役員の関与を強める構成になっていますし、委員には社外監査役1名も含めています。委員会としては役員の指名と報酬の決定プロセスへの関与ということで、ここまでは報酬関係のウェイトが多く占めてきたかと思います。役員報酬は、中長期的な企業価値を指標に含めるか、直近の業績に対する貢献度を大きく見るかといろいろ検討余地はありますが、これからも試行錯誤が必要と思います。指名・報酬委員会で議論することにより、客観性・透明性・公平性が向上したと思いますし、取締役も納得感があるのではないでしょうか。
松村:指名・報酬委員会設立以来開催された9回の委員会では、委員長である村上取締役のもとで報酬関係事項を多く扱ってきており、今回は新たに株式交付信託制度が導入されました。本制度は取締役への報酬として業績達成度と個人貢献度によって当社株式が交付される仕組みで、さまざまな観点から議論を行ってきましたが、委員会として役員の業績向上に向けたインセンティブと当社への貢献度の高まりを期待しているところです。一方で指名面についても、重要人事に関して候補者との面談を行いましたし、サクセッションプランに関しては適切な講習を受ける機会も提供していただきました。こうした講習等を通じ、サクセッションプランのさまざまな可能性を認識しておく必要性を感じました。また、当社としての最適プランニングに向けて適切にモニタリングしていくことが重要であると思います。
芳賀:新任の社外取締役としてお声がけいただいたのは、経営面でアドバイスをしてきた経験者ということと理解しています。今の取締役会のメンバー構成はスキルマトリックスという形でも本当にさまざまな分野の社外役員がいらして、さまざまな角度、視点からのアドバイス、モニタリングができるのかなと思います。
指名・報酬委員会のメンバーとして考えていることは、指名自体が目的ではなくてサクセッションプランをきちんと管理していくことが重要だと思います。世の中で誤解されてしまうことが多いのですが、指名・報酬委員会がサクセッションプランを作り上げるのではなくて、人事・人材開発部などで実施しているものが適切なプロセス、適切な方法で行われているかを定期的にモニタリングしていくこと、本人と面談することでその妥当性を確認すること、それが指名委員会のサクセッションプランに対する役割だと私は思っています。当社が難しいのは、1つの事業で大きくなってきた会社ではなく、経営統合で多くの会社が一緒になっている点です。新卒から育てるプランだけではなく、統合で一緒になった人達に同じチャンスをどう与えていくか、それでも不足する人材は外部から採用する必要もあるのではと思います。
村上:そうですね。役員の指名については、候補となる執行役員クラスとの面談なども始めたところです。そして、役員候補者の指名とともに役員のインセンティブとして適切に機能する報酬制度のあり方も考える必要がありますね。
芳賀:今回の株式の業績連動の報酬制度は、まさに株主と利害を共有するということで投資家の目線でも評価される報酬制度だと私も思っています。これがどれだけ取締役のインセンティブにきちんと働いていくかはこれから検証していかないといけないと思うのと、個人の貢献度評価と会社の業績評価の比率は、役員の役割や経験によって多少比率を変えることもあり得るかと思います。役員報酬はポジションによって異なります。役員の役職により、全体の報酬の何割くらいが固定で何割くらいが業績連動なのかという、そういう見方も検討していく必要があるのではと思っています。
村上:取締役のインセンティブという意味では、この1~2年ということだけではなく中長期的な要素を加味することも課題ですね。株式報酬は業績連動型として導入しましたが、全体的な報酬体系として取締役への適切なインセンティブとなっているか引き続き注視していく必要がありますね。