CSRレポート
ミネベアグループCSRレポート2010 第三者意見
ミネベアグループCSRレポートを拝読して
貴社の報告書の特徴として、まず、基本方針類がしっかりと体系化され、内容が充実している点を挙げることができます。社内に定着した「五つの心得」を根底に据え、そこからCSR方針、行動指針、環境方針などを展開していくロジックは、従業員の方はもとより、われわれ外部の人間にも大変分かりやすく、説得力があります。また、テーマごとに基本的な考え方を明記し、その上で議論を進めていく手法も理解しやすいものです。
個々の取り組みについても、随所で貴社らしさを発見できます。特に、海外拠点も含めた詳細なマテリアルフローの把握、CO2や廃棄物データの開示、物流対策への視点などは、早くからグローバル展開してきた貴社ならではのものです。タイでの最新省エネ化工場の建設、中国におけるクローズド排水処理システムの構築なども、最先端の環境技術を投入することを通じて、「国際社会との共生」という理念を具体的に示している事例として大変興味深いものといえます。
他方、課題としては、ビジョンや方針を中長期的にどのように実現していくのか、全体的なシナリオの提示が弱い点が気になります。CSR経営に当たり、ビジョンに基づく中長期目標の提示がないため、方針と個々の取り組みとのつながりが若干分かりにくくなってしまっています。個々には大変優れた内容を持っているだけに残念です。また、報告書内で「当社」と「当社グループ」が混在していることも、これを助長してしまっている印象があります。昨年までのグループ環境レポートでは、中長期的な展望とそれに向けた個々の取り組みについて、比較的方向性が分かりやすかったことに照らし合わせれば、この問題は、今回CSRレポートへと大きく転換を図る途上で生じた一時的な混乱によるものでしょう。
CSRの本質は、本業を進める上で、コンプライアンスを超えたレベルで設定する各社なりのコミットメントであるといわれます。画一的な解答のない問題だけに、多くの企業がその設定に創意工夫をこらしています。この点、貴社は、巻頭の貝沼社長によるトップコミットメントにも明記されているように、グローバル化で先鞭をつけ、進出先において法規制遵守に留まらない高いレベルの自主基準に基づく経営を実践してきた伝統があります。これまで培ってきた「真摯なものづくり」には、CSRを語るための経験・ノウハウが豊富に蓄積されているといえるでしょう。今回、貴社が環境中心の報告からCSR報告へと舵を切ったことで、今後、こうした暗黙知が具体的な形となって提示されてくるはずです。一例を挙げれば、現地採用の上級管理職の生の声、サプライチェーンでの配慮の実際(CSR調達)とその一環として見た生物多様性への配慮など、多くのステークホルダーが関心を寄せるテーマですし、既に貴社内に十分なコンテンツが存在することは想像に難くありません。貴社のCSRレポートの今後の展開に大いに期待したいと思います。
以上
竹ケ原氏 略歴
一橋大学法学部卒業後、日本開発銀行(現 (株)日本政策投資銀行)に入行。
ドイツ駐在、調査部や政策企画部、公共ソリューション部CSR支援室課長などを経て、現職。
その他、中央環境審議会 総合政策部会「環境と金融に関する専門委員会」委員、環境省「環境ビジネス市場規模・雇用規模調査 対象業種・サービス検討委員会」委員などを務める。
第三者意見をいただいて
CSR推進本部CSR推進室 室長 小林秀紀
大変貴重なご意見をいただきました。まことに有難うございます。
2003年度より発行してきた「ミネベアグループ環境レポート」の「環境報告」に「マネジメント報告」および「社会性報告」を加え「ミネベアグループCSRレポート」として新たな報告形式にレベルアップを図りました。
そのため現時点では、ご指摘の通りマネジメント報告や社会性報告に関しては、現状の把握および報告にとどまっているところが大半であり、中長期目標につきましては不十分な報告になっております。また、環境報告においても、ほぼ全ての製造拠点でISO14001を取得しており、そのマネジメントシステムに則り目標を定め改善を図っておりますが、グループ全体の観点から見ると未だ十分ではありません。「当社」と「当社グループ」が混在しているのも同様の理由によるものです。
CSR推進活動については、本年度の「ミネベアグループのCSR基本方針」と「ミネベアグループのCSR実践に向けた活動方針」の策定に引き続き、来年度以降はご意見を真摯に受け止め、ご教授頂きました「CSRの本質は、本業を進める上で、コンプライアンスを超えたレベルで設定するコミットメント」である事を念頭におき、環境も含めた中長期目標の策定、PDCAサイクルに沿った運用による継続的改善を図っていきます。
また、このCSRレポートが全てのステークホルダーの皆様にミネベアを知っていただく有効なツールとなるよう「読みやすい、分かりやすい」レポートを心がけてまいります。